
さくら
もうだいぶむかしのことや。
そのとき、わしは朝飯のたまごやきを口にいれようとしていた。
あへ?あへっ?なんかへんや。
さいしょ、なにがへんなのかわからへんかった。
もふ。もふ。あへ?あへっ?
やっぱりなんかがかくじつにちがう。
したけど、まわりはぜんぶおなじや。
ちがっていたのは、わしのほうだったんや。つまりわしのなかみや。
ん? んっ!!
わし、きづいてしまったんや。
そのとき、わしのからだのまんなかに、
どえらい空洞がとつぜんしゅっげんしてるのを。
虚無感とか「なんかわたしからっぽなの、うふふ」とか、
そんな、かわいいもんやないで。ごっつ空洞や。
まっくろくて、そこのみえない、えげつない空洞や、わかるか?
わし、底におちないように、空洞のへりに手と足ぜんぶつかって、
ひっしになって、へばりついたねん。
ふみはずしたら、かえってこれへん。だれもわしを絶対にすくえへん。
それだけはわかる。これは怖いで。
そやから、ゆらゆら帝国が、あの名前のアルバムをだしたとき、
わし、心底おどろいたねん。あれを唄にしてしまうなんてごっつ怖いやつらやで。
とにかくわしにはその場にうずくまるしかできへんかった。
じっと、じっと、そろり、そろりと。
その日のゆうがたにみた、さくらの刺すようなそんざいかん。
あのうつくしさはなんやったんやろ?
そっちはもうさくらやね。
+++北海道PLAINJAPふるさと通信員+++
posted by Admin at 21:42
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